その日俺は少し苛つきながらハンドルを握っていた。イエローベアの窮地を聞き奴の隠れ家に向けて飛ばしていたのだが
こんな時に限って市警のクソどもが目を光らせてやがる。
あまり目立つことをして嗅ぎまわられても面白くない。
「こいつらトロ過ぎんだよ!」
速度をそこそこにしてただひたすら長い車列に呪詛を吐いていた。
数十分後やっとのことで渋滞を抜け、急いで奴のところに向かった。
奴の隠れ家近くに着くと用心の為少し手前で車を降りる。
俺達のような職業の人間には基本中の基本の行動だ。
まあこの俺が尾行られてるとも思えないが万が一と言うこともある。
コレを怠ったがために命を落とした奴らを何人か知っている。
「この業界は臆病な奴が長生きするからな。」
自嘲気味につぶやくと周りに注意を走らせ再度尾行の有無を確かめる。
どうやら尾行はついていないようだ。
俺は奴の隠れ家にすばやく入り込んだ。
暗闇に目を慣らし奴がいると思われる部屋の前で呼びかけた。
「大丈夫かっ、イエローベアー!安心しろ俺だ、ブラボー9だ。」
すると壁の一部が動きイエローベアが姿を現した。
「よぉ、遅かったな。」
2メートル近い大男の口から眠たげな声が漏れる。
「さすがだな。そんな所に部屋を作ってるとは思いもしなかったぜ。」
「まあ、用心に越したことは無い。それに誰が敵か分かったもんじゃない・だろ?」
この巨躯に似合わず細心の注意を払って行動することの出来る男だ。
だからこそ俺も信用し、共に生き残ってこれたのだが。
「そう言うなよ。ほら食糧持ってきてやったぞ。ほとぼりが冷めるまでここで頑張れ!」
食糧を渡すとベアはその中からハムを取り出し、ビニールの包装ごとガブリといった。
「あ、相変わらずだな。」
半ばあきれながら言っても気にもせず食い続ける。
「ほとぼりねぇ。いつ冷めることやら。」
あっという間にハムを一本片付けると次を物色する。
「なーに、チョクチョク様子見に来てやるよ。」
そんな風なやり取りを交えながら今後どうするかを話していたときだった。
「シッ!」
今まで眠たげな声しか出さなかったベアが鋭く俺を制する。
「ブラボー、お前しくじったな。」
「何言ってんだ、俺が尾行られる筈無いだろう。」
そう言いながらあたりの気配をうかがう。
やはり誰もいないように思える。
目線でベアに訴えるがまだ警戒を解こうとはしない。
「心配性だなあ、お前も。しょうがないちょっと待ってろよ。今見てきてやるよ。」
危険な立場にいるから過敏になっているのだろう。
「いや、危険な立場なのはいつものことか。」
俺は苦笑まじりに外へ様子を見に行った。
(続く)










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